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漢方のススメ vol.3 効果と薬害の狭間

まずは、薬物による視覚障害から身を守るためにできること、についてお話したいと思います。

20160308eye

御見苦しい「どアップ」で失礼します。
若い時は「瞳がステキ!」とよく言われたもんですが(笑)。

俺、肝臓つかれているなぁ。
発黄し始めているように見えるぞ・・・。
気をつけよう・・・。

ステロイド(コルチコイド)と交感神経β作動薬の混合吸入剤を使用して1ヶ月が経過する患者さんが視力が低下してきたというご相談がありました。
シムビコート

これを薬害とするのは、少し話が乱暴すぎますが、一つ一つ順を追って、対応策につなげたいと思います。

1、この薬が処方になった経緯が必ずあります。
ご高齢の患者さんで夜に呼吸が苦しくなって受診をして処方になったようです。

2、患者さんの既往歴や日頃のライフスタイルの確認が重要です。
高血圧でひっくり返ったことがある。
普段便秘がちである。
御商売をされていて、よく動かれる。
体調が良い時は、ゴルフでラウンドされるのがお好き。
やせ形の女性。

3、薬剤使用(あるいは服用)から生活習慣をどのように変えたか、もしくは処方医や薬剤師から何らかの説明があったのか?
特に日常生活での注意は何もなかった様子。

4、その他、患者さまの状況。
左右の視力で、左はもともと視力が弱く右目を中心に見ていたが、薬の使用後から見える側の右視力の低下を著しく感じるとの事。

薬剤の大前提

そもそも ステロイド剤(コルチコイド)ってどんな薬?

ステロイド剤を薬学的に表現すると、抗炎症とか、免疫抑制とか、そんな回答が多い。
これではちょっと問題がぼやけて分かりにくい。

そもそもコルチコイドというのは、もともと私たちの体に備わっているホルモンの一種です。
それってどんな時に分泌が多くなるのかというと、「ガンバるとき」、とか「ストレスに立ち向かう時」に分泌が盛んになります。
よく言われるフレーズが「闘争」か「逃走」か!という状況下で、ステロイドホルモン(コルチコイド)はバンバン分泌しているのです。
エネルギーをより多く私が必要とした時に活発に分泌してくれるのです。
だから動けるのであり、立ち向かっていける(勇気をいただく)のです。

①ガンバル(がんばりたい)
②ステロイドホルモン(コルチコイド)が分泌
③エネルギーをたくさん生み出す
④活発に活動をする

こんな流れになります。

さて、ここで良く考えてみましょう。

②→③→④
という流れの中で、いったい「何を」元手に「エネルギー」は作られるのでしょうか?

多くの方々の回答は「食べ物」です。
半分正解で半分は間違っています。

私たちはマラソン中にバナナを食べるように、常に何かを食べているわけではありません。
3度の食事で食べたものを、ある程度は体に蓄えられる形でストックしてあり、それをエネルギーが必要な時に利用しているわけです。

福岡伸一先生のご著書「生物と無生物の間」の中にも記されていますが、私たちの体には炭水化物をため込むシステムは備わっていますが、ことタンパク質に関しては貯蓄するシステムが備わっておらず、現在の肉体の体積の中にあるタンパク質は絶えず、食べたものと今まで体に存在していたものが「入れ替わっている」のです。

肉体が長持ちするためには、「エントロピー増大を最小限にする」ことが物理学的には命題であり、そのための特殊な能力がタンパク質の入れ替えであると説明があります。
つまり、タンパク質は多く食べても、蓄えるシステムを私たちは持っていないのです。

それが何を意味するのかが大切なのです。

現在体に在る栄養素の範疇で生み出されるエネルギーで活動をしているのならば、②→③→④という行程を経て体調が悪化する事はまずありません。

しかし、肉体状況とそれをとりまく各々の状況や環境は、人それぞれ異なります。
A、活動量や思索量が半端なく多いタイプ。寝る間も惜しんで色々するタイプ。
B、活動量はそれなりであっても、極端に栄養摂取が少なかったり、偏りがあるタイプ。
C、老化や大きな病気・ケガを経て、エネルギーを生み出す能力が低下したタイプ。

食べている量よりも、エネルギーが多く必要になった時。
食べたものから利用してエネルギーをうまく作れなくなった時。
私たちは、自らの肉体を溶かして(分解して)、エネルギーを創り出し始めます。
膠原病(こうげんびょう)はまさにそんな疾患だとご理解下さい。

ステロイドホルモンを薬剤として使用した際に、このホルモンには肉体を分解してまでも「エネルギー」を作り出す能力があります。
それが回復力へとなれば理想的ですが、人それぞれの生活状況によっては、お仕事や家事に、遊びに、エネルギーを生み出すようになります。
疲れにくくなるという感覚を代償に、知らぬうちに自らの肉体を破壊してしまいかねないのです。

薬剤利用のリテラシーとでもいえばよいのでしょうか?

これは例え「漢方薬」を利用する場合においても同じことがいえます。
漢方薬による副作用報告も、選び手の熟練度が低く間違えてしまう場合か、薬の力に過信をして患者さんの側が最適な治療のモードになっていない場合には、発現する可能性があるのです。

ステロイド剤を利用して、「休養」を重要視しないまま薬剤を使い続ける事で発病する「白内障」があります。

特徴は「水晶体の後嚢下混濁が多い」という所見はありますが、必ずしもそのようになるともかぎりません。

水晶体は「Ⅱ型コラーゲン」を主成分として、透明な蛋白構造を形成しています。

コラーゲンの3分の1は「グリシン」という糖原性アミノ酸です。

脱アミノ化をすれば、容易に炭水化物になり、エネルギー源として利用されかねません。

水晶体のコラーゲンが不足し結晶構造は乱れ、組織は破壊され、視力が著しく低下してまいります。

このように構造の破壊が進行してから治すのは大変です。

なをかつ、主訴である「夜になると呼吸が苦しくなる」という状況の改善も併せて実現できる方法が求められます。

漢方では「疲労回復」へのマネージメントを重要視します。

そもそも 交感神経β作動薬ってどんな薬?

ステロイドホルモン(コルチコイド)と同じように、体が頑張りたい時に、交感神経の神経節から分泌するアドレナリンやノルアドレナリンの刺激によって、肉体を活発に動かすスイッチ(β受容体)を刺激するお薬です。

ハンターが狩りをする時に、獲物の立場ならハンターから逃げる時に、たくさんホルモンによって刺激されるスイッチの一つが交感神経β受容体です。

つまり、ステロイドホルモンと同様に、このスイッチが押されると、エネルギーを生み出すために、肉体が破壊されかねないのです。

心拍数を上げ、血圧を高め、気管支を拡張する。
つまりは何もしてなくても運動をしている(走っている)ような肉体状況を作る薬なのです。

あとはステロイドホルモンのところで記載した現象と同じような事が肉体では展開される可能性が大なのです。

短いスパンで時系列に自覚症状(バイタル)と体調を確認しながら、不要とみれば中止や休止をする事が、β刺激薬の適正使用にも必要だと考えます。

 

副作用との関連はわかっていない

これらの薬と、白内障発症の因果関係は立証されていない、と添付文書や医学誌、さまざまな情報サイトにも記されてはおります。

よく分かんない?で片付けられているわけです。

しかし、生体内でおこりそうな生化学的な反応は、勉強しながら臨床に日々身をおいていれば予測する事はできます。

ところが、それも複雑な生物環境が故に、直接的な因果関係を立証する事は難しいのかもしれません。

でもね、降った雨が土を潤し、様々な命の息吹になったり、地下水脈になったり、さまざまな物が循環しているように、私たちの体の中の自然も循環しています。

あっちを立てたら、こっちが立たず、なんてことは生体内では日常茶飯事です。

その究極な形が「がん」だったりするわけです。

だから、ちょっとおかしいかな?と感じた症状に丁寧に対応する。

漢方はバイタル(自覚症状)から、お薬を導き出すので、検査の結果がどうであれ適切な治療を行う事ができます。

ステロイドや交感神経作動薬を使ったら、それは「効きます」よね!

だって、生物が生き抜くための本能の力を「ON」にする薬なんだから。

ヘトヘトな所に鞭打ったら、薬じゃなくったって具合が悪くなるよね。

薬の場合は、体に入ったら問答無用で動き始めちゃうんだよね。

薬を使って治療の提案をする側が、薬の「問答無用力」、つまり「強制力」の事を、もう少し重要に考え、使う場合にはどんな事を生活するうえで注意する事が必要なのかを、きっちりとお伝えしなければ、それを使う資格はないと思ってほしい。

体の中ではどのような反応が起きるのか、さまざまな想定を丁寧するべきだと思う。

患者さんに治す方法を提案する時も、体の中で起こっている事を丁寧にお伝えして、双方が納得して治療を行うべきだと、常々感じています。